TAGUCHI, MASAYUKI
FEATURE 045

新潟市在住の電子音楽家、田口雅之。2012年に発表された彼のアルバム作品『CAVE』は、国内外で高評価を獲得。今作では、純度の高いサイン波を幾重にもレイヤーし、ドローニッシュなアンビエント・サウンドで一見シンプルな構造でいながら、何とも緩やかで耳心地の良い、独特な美しさを持ったサウンド・スケープを私たちの脳裏に描いて魅せてくれました。そうした音響作品のかたわらでは、即興舞踊やインスタレーションとのコラボレーションも行っており、注目すべき新潟アーティストのひとりです。そんな彼がexperimental room #14に登場!ということで、アルバムの制作について改めて振り返って頂きつつ、基本的なアレコレを聞いてみました。




HOMETOWN
Niigata, JP

MEMBER
Taguchi, Masayuki

WEB
TAGUCHI, MASAYUKI

VIDEO

Cave 01


Bpm133.34 Test




experimental room #14

2014 04 19 SATURDAY

Utsuwa

Open 17:30 / Start 18:00

Adv 2500JPY / Door 3000JPY / From Out Of Niigata 2000JPY / Under18 FREE!

live:
OTTO A TOTLAND
ERIK K SKODVIN
RAUELSSON
AUS
TAGUCHI, MASAYUKI

dj:
JACOB

more info: experimental rooms
まずは自己紹介をお願い致します。

新潟市在住の田口雅之と申します。電子音を使った音楽、音響作品の制作をしています。

どのようにして音楽活動をスタートされたのでしょうか?

1997年、僕が中学生のとき、当時のJポップを席巻していた小室哲哉の影響のもと、ちょうどそのころ我が家にもやってきたWindowsのデスクトップパソコンと、お小遣いで買った初心者向けのシンセサイザーで、「曲づくり」とも「音あそび」ともつかないようなことを始めたのがスタートです。2000年代に入ると、家庭用のパソコンでもデジタルによる音響処理が本格的に出来るようになってきたので、僕もMax/MSPというヴィジュアル・プログラミング用のソフトを使って、より自由度の高い音づくりを求めるようになりました。その間さまざまな影響を受け、作る音楽の雰囲気も変わっていきましたが、曲の全体的な構成よりもミクロな音づくりの部分に執着していた点では、昔からずっと変わっていない気がします。ちなみに今はMacのノートパソコンを使っています。

改めて2012年に発表された作品『CAVE』を聴かせて頂いています。音の奥行きを感じつつ純度の高い美しい響きを持った音響作品で、とても素晴らしいです!振り返って頂き、どのようにして今作は制作されたのでしょうか?

自分がいま取り組んでいることの中で、ある程度クオリティーが出せて、なおかつ他の人があまりやらないことは何かと考えた結果、『CAVE』のような音響作品に行き着きました。持続音主体のアンビエント・ミュージックは他にもたくさんありますが、倍音を含まない最もピュアな音である"サイン波"のみを重ねていくという手法は、電子音の合成方法としては基本的過ぎるため、今更取り組む人も少ないだろうと思ったので、思い切ってそれだけに要素を絞りました。純度が高いと感じて頂けるのは、実際使っている音がピュアなものだからだと思います。手法自体は基本的なものですが、近年のデジタル環境では無数のサイン波をより精密に重ねることが出来るようになってるので、それぞれのサイン波の周波数や音量を幾度も微調整しながら独特の響きを探っていきました。

こうした作品を制作される際、普段どのようなものにインスパイアをされることが多いですか?

具体的な影響はやはり音楽から得ることが多いと思いますが、コンセプトの部分では、自然科学からインスパイアされることも多いです。専門的な内容まで理解できなくても、概念を分かりやすく表した絵や例え話などから音のイメージを広げていくこともしばしばあります。『CAVE』の場合も、超弦理論の中で示されるイメージ(振動が粒子となって空間を満たしているようなイメージ)が着想の一つとなっています。数学はもっと直接的に音楽づくりに役立てています。例えば、ある特殊なパターンの旋律やリズムをつくるため、いくつかの素数を組み合わせるという手法はとてもよく使っています。

今までに即興舞踊家の松崎友紀さんとのコラボレーションがありますが、サウンド以外のパフォーマンスとのコラボレーションについてはいかがですか?

松崎とは生活上のパートナーということもあって一緒に活動する機会もありますが、躍動的なリズムをあまり持たない僕の音楽は、基本的には踊りの音楽として向いていないと思います。ただ松崎の場合は空間への意識が強いため、僕が音を担当する場合は、音が空間をつくる一つの要素となって、踊りと空間とをより結びつけることを意識しています。松崎とは、小原典子さんのインスタレーション作品の中でも何度かコラボレーションさせて頂きましたが、ここでもインスタレーションとともに空間をつくることに主眼を置いて音づくりをしました。

最近のお気に入りのアーティストや作品がありましたら教えて下さい。

Terry Rileyの『A Rainbow In Curved Air』です。最近これを繰り返し聴いていました。言わずと知れたレジェンドですが、源流にある分、剥き出しのカッコよさがあると思います。

4/19のexperimental room #14へのご出演どうもありがとうございます!今回の会場の器では初の演奏となりますが、どのようなパフォーマンスとなりそうでしょうか?

雰囲気があってとても素敵な会場ですので、何かこの場にふさわしいものを用意したいと思っています。素晴らしいアーティストたちを迎え、イベント自体とても素敵なものになりそうですが、僕は今回オープニングを任されているので、そんな素敵な空間へと会場全体を誘うようなイメージを持って臨みたいです。

それでは最後にリスナーに一言お願いします!

良い音楽が世界中に溢れている中で、独創的で人を魅了し得る価値を秘めた音楽をこれからも作っていきたいと思っていますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。



INTERVIEW in April 2014
TEXT by Masato Hoshino